健康保険の傷病手当金

普段からうまく助成金を活用している企業は、今回の新型コロナウイルス騒動でも助成金を活用しています。

しかし、普段から助成金を利用していない中小企業では、存在を知らなかったり、進め方が分からない、といったケースが続出しています。

雇用関係の助成金は、通常であれば雇用保険の被保険者がいなければ対象になりませんが、雇用調整助成金の特例措置によって被保険者でなくても対象となります。

融資と合わせて活用していくことで、コロナ危機を乗り切ってほしいと思います。

 

さて、今回は「傷病手当金」についてです。

新型コロナウイルスに罹ってしまい、仕事ができなくなったら普通の企業であれば収入がなくなってしまいます(ノーワークノーペイの原則)。

このような時に思い出したいのが傷病手当金です。

傷病手当金とは

健康保険というと、治療が3割負担で受けられる療養の給付が有名ですが、これ以外にも給付はあります。

傷病手当金というのは、健康保険法の給付の一つになります。

傷病手当金は、「療養のために労務に服することができない場合に、労務に服することができなくなった日から起算して3日が経過した日から労務に服することができない期間、手当金を支給する」というものです。

療養は病気の治療などをいいます。

労務に服することができないとは、病気等のために全く仕事ができないことをいい、別の仕事ができるような場合は該当しません。

3日が経過した日とは、連続した3日をいい、この3日間は給付の対象となりません。連続した3日なので、途中で労務に服した場合は待期が完成しないことになります。

ちなみに有給休暇としていても、労務不能であれば待期は完成します。

傷病手当金の支給要件

・療養のため労務不能である

・3日間の待期を満たしている

傷病手当金の支給額

1日の支給額

支給開始日以前の継続した12月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30 × 2/3

 

支給開始日以前に継続した12月がないときは、以下①と②のうちの金額の低いほうで支給されます。

①支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額

②前年度の9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を基礎とした標準報酬月額(令和2年は30万円)

 

たびたび標準報酬月額という言葉が出てきますが、標準報酬月額とは給料の額を段階的に区分したものをいいます。

いちいち個別に計算していては煩雑になってしまうので、健康保険では第1等級の58,000円から第50等級の1,390,000円まで区分して、該当する数値を使って計算します。

例 290,000円から310,000円の人は、標準報酬は300,000円の22等級になります。

 

傷病手当金の対象者が、同時に出産手当金も受けられるときは調整されます。

また、賃金が支払われたり、障害厚生年金が支給される場合も調整されることがあります。

新型コロナウイルスでの傷病手当金

新型コロナウイルスが原因で、療養のために労務に服することができない場合も傷病手当金の対象になります。

新型コロナウイルスの自覚症状がない場合でも、検査で陽性と判断され、療養のために労務に服することができなければ、傷病手当金の対象となります。

 

今般の新型コロナウイルス感染症の相談・受診の目安

・風邪の症状や 37.5℃以上の発熱が4日以上続いている(解熱剤を飲み続けなければならないときを含む。)

・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある

※ 高齢者や基礎疾患等のある方は、上の状態が2日程度続く場合のいずれかに該当する方について、「帰国者・接触者相談センター」に相談し、相談の結果、新型コロナウイルス感染の疑いのある場合に、「帰国者・接触者相談センター」から紹介された専門の「帰国者・接触者外来」を受診するよう示している

新型コロナウイルスに関する帰国者・接触者相談センター

傷病手当金の支給期間

傷病手当金の支給は、支給開始から起算して1年6か月までです。

 

傷病が治って労務に服した後、再び同じ傷病で療養しても延長はされません。

出産手当金との調整により、傷病手当金が支給停止された場合でも支給開始の日から1年6か月です。

 

業務に起因する病気は労災保険、業務外の病気は健康保険の対象になりますが、業務中であっても業務外の病気で労務に服することができないなら、その日は待期期間に算入されます。

業務終了後に療養のために労務に服することができなくなった場合は、翌日が待期1日目になります。

新型コロナウイルスは、自営業者等も対象

健康保険組合や健康保険協会と違い、自営業者等の国民健康保険の人は、傷病手当金がありません。

国民健康保険では、傷病手当金は任意給付なので、条例を制定すれば支給することができるとされていますが、現状ではありません。

 

今回の新型コロナウイルスでは、感染拡大防止の観点から、国が特例的に特別調整交付金を支援することで国民健康保険の被保険者も対象に含まれることとなりました。

対象となる人は、新型コロナウイルスの感染者、または感染の疑いがある人です。

 

傷病手当金の支給要件は、労務に服することができなくなってから3日を経過した日から労務に服することができない期間です。

 

支給額は、「直近の継続した3か月間の給与収入の合計額÷就労日数×2/3×日数」です。

 

適用期間は、令和2年1月1日~9月30日までの期間で、療養のために労務に服することができなかった期間となります。

追記:12月31日まで延長されています。今後も延長される可能性があります。

まとめ

健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)の被保険者が、療養のために労務に服することができない場合は、4日目から傷病手当金の対象になるということ。

 

国民健康保険の被保険者は、傷病手当金が任意給付となっていますが、新型コロナウイルスの場合は、国民健康保険の被保険者も傷病手当金の対象です。

 

感染しないのが一番なんですけどね。