ライフプラン

以前、仕事中の怪我は労災保険(労働者災害補償保険)の対象になるという話をしました。

 

仕事中は会社が労働者の安全に配慮するので、実際はプライベートでケガや病気をする人の方が多いかもしれません。

では、プライベートで怪我や病気をした場合の扱いはどうなるのでしょう。

業務中による傷病の場合は解雇制限がかかる

まず初めに、仕事が原因で(仕事中に)怪我や病気になった場合は、業務災害になります。

業務災害によって負傷した場合は、療養するために休業する期間及びその後30日間は、会社は労働者を解雇できなくなります。

仕事が原因で負傷した労働者の生活を保護するために、法律で制限が加えられています。

 

また、仕事が原因で負傷した場合は、労災保険から必要な給付が行われるため、治療費はかからず、療養するために働けない場合は平均賃金(給付基礎日額)の8割(保険給付+特別支給)が補償されています。

仕事中の怪我や病気なのに健康保険で治療させたり、治療費を会社が実費で負担して公にしないのを「労災隠し」といいます。

労災隠しは法律違反なのですが、建設現場等では様々な理由(保険料が上がる、報告が面倒、得意先から仕事がなくなる等)から起こりやすくなっています。

プライベートのケガや病気(私傷病)の扱いは就業規則による

業務以外の原因で怪我や病気になることを「私傷病」といいます。

ちょっとした病気であれば問題ないかもしれませんが、私傷病が原因で長期間の休みが必要になった場合は生活がかかっているので問題です。

 

有給休暇が残っていればまだしも、有給休暇を使い切った後にも休職する場合は、その会社の就業規則がどうなっているかがポイントとなります。

「就業規則」とは、職場で働く際に守らなければならない会社と労働者のルール(規則)をいいます。常時10人以上の労働者がいる会社では就業規則の作成が義務付けられています。

 

業務上の事由による傷病の扱いについては、法律による定めがありますが、私傷病による休業については法律の定めがないので、就業規則によるとされています。

私傷病による休職が認められる期間は、会社によって1か月~2年、3年と様々です。

気を付けて生活していても私傷病が原因で会社を休職することはありますから、事前に就業規則を確認しておくことは大切なことです。

休職中の賃金は?

業務中に起きた怪我や疾病であれば、普通は労災保険の対象になるので、治療代はもちろんのこと、休職中も労災保険の休業補償給付が支給されます。

しかし、私傷病の場合は、会社に責任はありませんから、どれだけの期間休職できるかや、休職中の賃金がどうなるかは問題です。

長期の私傷病については、会社が休職期間の雇用や賃金について法律で保障しなければいけない義務はなく、会社の就業規則に委ねられています。

ほとんどの会社では、私傷病による休職について「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいて無給としていることが多いので、有給が残っていなければお金が入ってきません。

ただし、「協会けんぽ」や「組合健保」に加入している場合は、「傷病手当金」の対象となることがあります。

傷病手当金がないとライフプランは破綻する

傷病手当金とは、療養のため労務不能で報酬が受けられないとき、連続して3日間以上休んでいるときに欠勤4日目から1年6か月間、1日につき支給開始日以前の継続した12か月の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1の額の3分の2相当が支給されるという制度です。

 

標準報酬月額というのは、賃金を50段階に分けたものです。

健康保険の計算をする場合、一人一人の賃金額を基に計算しているわけではなく、例えば、月の賃金が290,000円~310,000円の人は、標準報酬は300,000円といったように、賃金は段階に振り分けられます。

このように月の賃金が290,000円~310,000円の人は、300,000円を基にして保険料や傷病手当金が計算されることになります。

 

「標準報酬月額を平均した額の30分の1の額の3分の2相当」とは、簡単に言うと「1日分の3分の2」となります。

前12か月の標準報酬月額がずっと300,000円の人であれば、「3000,000×12か月÷12か月÷30日×2/3」となり、1日当たりの傷病手当金は6,667円となります。

イメージとしては、1年6か月間は会社から給料が出なくても、賃金の3分の2が傷病手当金で受給できるという感じです。

 

ちなみに、傷病手当金の対象となる療養中に会社から賃金が支払われたりすると、傷病手当金が支払われなかったり、賃金分を差し引いて支給されます。

職場復帰できるかは会社次第

私傷病について、会社と労働者との間の取り決めは法律上の定めがありませんので、就業規則によるといいました。

私傷病で休職する場合は、会社によってピンキリと言われ、1か月から2、3年と差があります。

休職後に会社に戻れるかどうかも就業規則がどうなっているかポイントです。

 

会社によっては、前と同様の仕事をこなせないと判断しても、配置転換や負担の少ない業務にしてもらえる場合もあります。

休職者が元の職場に復帰できるかは原則会社次第といえます。

プライベートが原因の傷病で会社を休む場合についてのまとめ

・労働基準法には、私傷病による休職についての定めがない。

・私傷病による休職の取り決めについては、「就業規則」による。

・私傷病による休職中について、多くの会社は無給としていることが多い。

・協会けんぽ・健保組合等の被保険者であれば、傷病手当金を受給できる。

・傷病手当金は、賃金の3分の2(1日の上限あり)が目安。

・職場復帰できるかは会社の判断による。

・長く休業した場合はライフプランが破綻する可能性が高い。