アルバイト・パートにも正社員と同じように法律で保障された権利があります

テレビを見ていたら、大学生アルバイトが人手不足を理由に残業を強制させられたり、アルバイトを休めないといったニュースが取り上げられていました。

その番組でインタビューされていた大学生アルバイトさんは、「同じ仕事をしてもアルバイトは正社員より安いからアルバイトは酷使される」といったことを言っていました。

また、「アルバイトも正社員のように権利が欲しい」とも言ってました。

 

大学生のアルバイトさんがテレビで言っていたように、今回はアルバイトには労働者の権利がないのかについて触れてみます。

アルバイトやパートの人にも正社員と同じようにある権利

労働者は、「労働基準法」という法律によって働く際の権利が保護されています。

 

労働基準法には、正社員・契約労働者(有期労働者)・アルバイト・パートといった区分はなく、アルバイトやパートであっても条件を満たせば、正社員と同様の権利が認められています。

例えば、アルバイト・パートであっても、6か月以上継続して勤務して労働日数の8割以上出席すれば、有給休暇(年次有給休暇)の権利が発生します。

また、アルバイト・パートであっても、契約期間中はやむを得ない事由がない限り、使用者の気まぐれで解雇させることは出来ません。

働くことになったら、アルバイトであっても正社員と同様に、速やかに労働条件に関する書類を交付してもらえます。

 

そして、アルバイト・パートにも労災保険の適用があり、一定の要件を満たした場合は雇用保険や健康保険、そして厚生年金の適用もされます。

アルバイトやパートの有給休暇

働いてから6か月間継続して勤務し、決められた労働日数(所定労働日数)の8割以上出勤すれば、アルバイトやパートであっても有給休暇(年次有給休暇)の権利が発生します。

もし、6か月未満の労働契約であっても、契約が更新されて合計6か月以上であれば、同じように有給休暇の権利が発生します。

 

ただ、週の労働時間が30時間未満の労働者の場合は、労働日数に応じて与えられる有給日数が変わります。

 

最初は、有給休暇の算定は6か月で判断されますが、2回目以降は1年ごとで判断します。

例えば、働き始めて6か月間で8割以上出勤すれば有給休暇が発生し、その後の1年間で8割出勤しなかったら今度は有給は発生しません。

ただ、さらに次の1年間で8割以上出勤したら、また有給の権利が発生します。

 

一般の労働者の有給付与日数

継続勤務年数 0.5(6か月) 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
有給の付与日数 10 11 12 14 16 18 20

 

有給休暇が何日与えられるかは、勤続年数と1週間または年間の決められた労働日数によって比例します。

 

週の労働時間が30時間未満の労働者の有給付与日数

継続勤務年数 0.5(6か月) 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
週4日又は年169日から216日 7 8 9 10 2 13 15
週3日又は年121日から168日 5 6 6 8 9 10 11
週2日又は年73日から120日 3 4 4 5 6 6 7
週1日又は年48日から72日 1 2 2 2 3 3 3

 

1日の労働時間が4時間であっても、週5日勤務していれば比例付与の対象ではなくなり、一般の労働者と同じになります。

また、週4日の勤続日数であっても、1日8時間なら週の労働時間が32時間になるので、一般の労働者と同じになります。

アルバイトやパートが仕事中に怪我したらどうなる?

アルバイトやパートでも、仕事中に怪我をした場合は労災保険(労働者災害補償保険)が適用されます。

仕事以外の怪我の治療は「健康保険」を使い、仕事中の怪我の治療では「労災保険」が適用されます。

 

アルバイトやパートといった雇用形態や、国籍に関係なく、原則として一人でも労働者を雇っていれば、事業所(働く場所)は労災保険に加入しなければならないことになっています。

アルバイトやパートには、労災保険がないと勘違いしている人がいますが、労災保険には被保険者という概念がありません。なので、働く人はみんな労災の対象となります。

保険料の支払いがないので、自分には適用されないのだと勘違いしているのかもしれませんが、労災の保険料は全額事業主の負担となっています。

アルバイトやパートの雇用保険での扱い

アルバイトやパートであっても、一定の要件に該当すれば雇用保険が適用されます。

 

アルバイトやパートの人の雇用保険の加入要件については次の要件を満たすかどうかで決まります。

・週の所定労働時間が20時間以上である。

・31日以上継続して雇用されることが見込まれること。有期労働契約でも繰り返し更新されることが見込まれる場合も含む。

 

雇用保険の被保険者が離職した場合に、受給資格要件を満たせば、基本手当(失業手当)の対象になります。

失業して国からお金をもらったという話を聞いたことありませんか?それが基本手当です。

社会保険(健康保険、厚生年金)の扱い

ビジネス

アルバイトやパートでも、契約更新で1年以上雇用され、週の労働時間が通常の労働者の3/4以上であれば、事業主は健康診断を実施しなければならないことになっています。

 

週の所定労働時間、月の所定労働日数が通常の労働者の3/4以上であれば、健康保険や厚生年金保険が適用されます。

また、次のいずれの要件を満たすアルバイト・パート労働者も健康保険と厚生年金の被保険者になります。

・週の所定労働時間が20時間以上

・雇用期間が1年以上

・賃金が月8.8万円以上

・厚生年金保険の被保険者が501人以上

労働条件を明らかにした書類の交付

事業主は、アルバイトやパートの労働者を雇い入れた場合は、速やかに「労働条件通知書」又は「労働契約書」や「就業規則」を交付しなければなりません。

労働基準法では、事業主は労働条件の明示が義務付けられており、労働条件通知書等によって、契約期間、就業場所、始業及び終業時刻、従事する業務、賃金、退職、残業の有無、休憩、休日等が明らかにされます。

 

労働条件の明示には、必ず明示しなければならない事項と、会社に定めがある場合には明示しなければならない事項とがありますが、ここでは必ず明示しなければならない事項を紹介しました。

アルバイト・パートの働く上での権利まとめ

・アルバイトやパートにも有給休暇の権利がある。

・週や年の労働日数によって有給休暇が比例して付与されることがある。

・アルバイトやパートにも労災保険は適用される。

・一定の要件を満たせば、アルバイト・パートでも雇用保険・健康保険・厚生年金の対象(被保険者)になる。

・雇用されたときは、書類によって労働条件が明示されなければならない。

 

アルバイトやパートだからといって労働者の権利がないわけではありません。

社会保険関係は法律の改正も多いので、普段から新聞やニュースに触れるようにするといいと思います。