「ニュータウンは黄昏れて」の読書感想

資格試験が近づいてるにもかかわらず、お盆期間に大学が実施する社会人向けの講座を受けてました。

大学には片道2時間以上かけて電車で行ってたのですが、その行き帰りで読んでたのが「ニュータウンは黄昏れて」という小説です。

管理人は読む量はそれほどではありませんが、空いた時間を見つけては小説を読んでます。

特に好きなのは歴史小説ですが、推理系やノンフィクション系などジャンルにこだわらず読みます。あまりないですが面白い作品なら文学系も読みます。

 

今回読んだ「ニュータウンは黄昏れて」は、Amazonの評価はまあまあが多いようですが、管理人には妙にリアルでなかなか楽しめました。

特にこれからマンションや団地の購入を考えている人であれば、読んで損はない作品かなと思います。

ニュータウンの実情を描いてる

小説の舞台は都心から離れたいわゆるニュータウンといわれる新興住宅エリアに建つ分譲団地です。

バブルが崩壊する前に分譲団地を購入した家族の話なのですが、まさに今分譲団地に住む人達が悩んでることをリアルに描写しています。

 

主な登場人物は、ソフトウェア会社に勤める会社員の夫、その妻でパートで働く頼子、大学を卒業してフリーターをしてる長女の琴里です。長女の上に長男もいますが、学校の先生をして家を出てるのでほとんど作品には登場しません。

購入当時は5200万円だった家は現在の価値だと1500万円まで下落し、しかも家族は30年の住宅ローンを組んだので今も返済に追われる日々です。少しでも毎月の住宅ローンを軽くしようと借り換えの相談をしても担保価値の下落により断られます。

また、長女は大学を卒業して内定をもらった会社は入社式前に倒産してしまい、仕方なくフリーターをしながら教育ローンを支払っています。

 

新築分譲時は若かった住人も30年、40年が経って様々な問題を抱えています。

今では高齢者ばかりが住み、理事の成り手がいない、建物の建て替えや設備の老朽化といった正に現在団地で問題になっていることが出てきます。

 

イケメンの資産家も出てきて長女といい仲になるのですが、こいつがなかなかとんでもない奴だったりします。

詳しくは小説を読んでもらいたいのですが、ちょっと怖い話もあります。

文章も読みやすく、管理人にとっても身近なことを扱ってるのであっという間に読んじゃいました。

作者の恨みつらみが垣間見える箇所もありますけどおすすめです。

 

「ニュータウンは黄昏れて」 著者 垣谷美雨

バブル崩壊前夜に買ってしまった分譲団地。20年近く経つ今もローンを抱え、織部頼子は節約に必死だ。その上、老朽化による建替え問題に振り回される日々。一方、娘の琴里は27歳フリーター。ある日、友人の三起子にイケメン資産家の彼氏を紹介される。が、彼女は失踪し、いつしか琴里が彼と婚約することに。織部家、まさかの人生逆転?!一気読み必至の傑作社会派エンタメ長編。

マンションを購入しようとしている人には参考になる

この小説を読んでいて作者のマンションに関する法律や知識に感心したのですが、どうもこの小説は作者の体験談をもとにしているようです。

特にリアルに感じたのが5200万円で購入した分譲団地が今では1500万円というところで、今まさに値崩れが起きようとしているときに買ってしまったとこです。

 

管理人は最初に勤めた会社は不動産会社でした。管理人は高校を卒業して不動産会社に入社したのですが、不動産会社に勤めた時には既にバブルが崩壊し、かつて1億以上した家は3000万円台まで値下がりしてました。反対に利便性の高いエリアで比較的新しいマンションの中には新築時よりも値上がりしているものもあります。

 

分譲マンションと一戸建てとでは管理や修繕について大きく異なります。

マンションを購入して住んでる人にとっては当たり前でも、今までマンションに住んだことがない人には初めて知ることだらけです。

規約を読んでもこういうものかというのが普通で、購入してからもっとマンションについて勉強しておけばよかったという人はたくさんいます。

 

作中で建て替えについて理事会で話が出るのですが、所有者にお金がなければ建て替えはそうできるものではありません。

ゴーストタウン化は目前だなんてシーンもありますが、現実問題、交通の便が悪い郊外のマンションについてはそうなる可能性は高いです。

 

管理人は、眺望がよく、富裕層が住むことでも知られるタワーマンションもリスクが高い物件と思っています。

おそらく管理費と修繕積立金は定期的に値上がりしていくでしょうから、老後も住み続けるには年金以外の副収入がかなりないと難しいです。

 

タワーマンションで値上がり益を期待してる人は売ればいいですが、見栄や眺望で住み続けるのはリスクです。

タワーマンションの修繕は足場を組み立てられず、ゴンドラを使うので普通のマンションよりも修繕費は高くなります。

新築時は1万円以下だった修繕積立金が、今では5万円以上に値上がりしたというタワーマンションもあります。

今もタワーマンションは供給を続けてますが、居住者が高齢化して、管理費と修繕積立金が爆上がりしたらゴーストタウンになってもおかしくありません。

外国人ばかりで総会の運営が滞ってるケースが増えてますが、このままだと法律の改正をしない限り解決は難しいです。

おわり

作者は購入した時期と場所が悪かったので大損したようですが、実はマンションの価格はここ10年以上は右肩上がりを続けています。

都心の新築マンションに至っては平均価格が億以上です。反対に不便なエリアはマンションであっても値下がりしてます。

 

管理費と修繕積立金、建替え費用が負担なら家を売るという選択もありますが、物件によってはタダでも引き取り手がいないものもあります。こうなるとお金を出して引き取ってもらうよう頼むしかありません。

 

一番意味が分からないのが価値がなくても固定資産税がかかるということで、だったらお前ら市町村にくれてやるといっても受け取ってはくれません。

この国の法律は時代遅れのものが多く、今の時代に対応できてないものが多いと思います。

作品を読めば日本のマンションの問題が少しだけ分かります。