自律的に行動する「汎用AI(人工知能)」の出現を、2030年を目標にして研究しているそうです。
汎用AIの出現によって、弁護士を除く士業の仕事が奪われると予想されています。
今まで士業に依頼していた手続き業務が内製できれば、企業にとってはメリットですが士業にとっては深刻です。
実際、士業の支部会では、必ずといっていいほど議題に上がるのがAIについてです。
汎用AIと特化型AI
AI(人工知能)には、「特化型」と「汎用型」があるといわれます。
「特化型AI」というのは、特定の行為についてAIを活用したものです。
最近だと囲碁や将棋でAIがプロを打ち負かしたことで話題となりました。
社会保険労務士(以下社労士)は企業の社会保険や人事に関する手続きのプロですが、人事と関連する特化型AIでは、企業の採用選考でAIが使われ始めています。
エントリーシートの精査や面談にAIが既に使われており、学生はスマホで質問に答え、人工知能が学生の面接を行っています。
採用選考でAIを導入したことで時間の効率化が図れ、客観的な採用試験ができるといった効果が既に出ているそうです。
「汎用型AI」は、人間と同等以上の知能を持ち、特定の行為だけでなく、情報をもとに自律的に学習、思考、行動します。
汎用型AIの出現は、士業の仕事だけでなく、ホワイトカラーの仕事も激減させることになるといわれます。
というのも企業のオフィス業務の6割は、AIで代用可能といわれているからです。
汎用型AIが出現すると予想される2030年には、事務作業の多くは自動化され、士業や事務系職種の仕事がAIに奪われるそうです。
AIに仕事を奪われる士業
税理士、司法書士、社労士、行政書士といった弁護士を除く士業では、それぞれの分野で専門性を持ってますが、資格として行える業務は「手続き業務」だけです。
税理士であれば税金に関する手続き業務、司法書士であれば登記に関する手続き業務、社労士であれば社会保険に関する手続き業務、行政書士であれば許認可に関する手続き業務といった感じです。
社労士が「賃金コンサル」や「人事制度の構築」といった業務を行っているのを見かけますが、実はこれらの業務に資格は必要ありません。
本来の士業の業務は手続き業務だから騒いでいるわけです。
士業の業務が政府の政策によって簡素化している現在では、ただの手続き屋さんが淘汰されていくのは間違いなさそうです。
士業の中でもIT化が最も遅れているといわれる社労士ですが、政府は2020年を目標にして、税と社会保険の手続きを電子申請で行うように推進していくそうです。
そうなると、将来的には手続き業務だけで仕事をしている社労士も電子申請が必須となりそうですが、支部会で話を聞いている限り、とても電子申請を導入する様子がありません。
野村総合研究所とオックスフォード大学の調査によれば、2030年には、社労士の79%の業務は自動化されるそうです。
他の士業も自動化は避けられないようで、司法書士でも78%、行政書士に至っては93%が自動化されるといわれています。
ちなみに、AIに代替される可能性が高い他の業務には、事務作業、タクシーやバスの運転手、出荷・発送作業、窓口業務、測量士・通関士、店員等があげられています。
現在、若い人でこれらの業務に就いている人は、将来リスクがあるという認識をもっておくべきでしょう。
将来に備えて自己啓発をするとか、誰にも負けない得意分野がないと厳しくなるのは間違いなさそうです。
何より時代に柔軟に対応できる能力は必須です。
AIが代替できない業務
AIは、人間のように考える力に優れているわけではないため、「AIが人間に代わって出来ない」とされている分野もあります。
AIにはできないと言われているのが、「クリエイティブな業務」や「経営業務」「芸術性が必要とされる分野」です。
野村総合研究所は、AIが代替できない職種として以下のものを挙げています。
・弁護士
・医師
・プロデューサー
・経営者
・宗教家・思想家
・バーテンダー
・音楽・アーティスト
・教師
・カウンセラー
・デザイナー
これらに共通してるのは、0から1を生み出すことができないAIには無理な分野です。
事務作業や手続き業務がなくなっていくことは明らかなので、士業も今後はコンサルティング能力が求められることは間違いないでしょう。
社労士であれば、労働者のやる気を起こさせる人事制度の提案、年金制度の構築、労使紛争の防止対策、といった企業に向けたコンサルティングです。
今後は、士業にもマーケティング能力は必須のものとなりそうです。
業務は変わるかもしれませんが、学んだことは無駄にはならないはずです。
なぜなら専門分野に特化した知識を身に付けることで、新たなものを生み出すことが可能となるからです。
さいごに
この記事は2018年に書いたものですが、2023年の時点で状況がかなり変わってます。
まず、2022年にchatGPTが公開されましたし、業界によっては仕事がないどころか人手不足で売り手市場になってます。
今までは専門性が高い仕事が有望とされてましたが、専門性はAIによってカバーされ、今は肉体的な仕事が有望視されてます。