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安倍首相の働き方改革における労働時間の見直しで、データが都合よく改ざんされたそうで、連日ニュースに取り上げられています。

きっかけとなったのが「裁量労働制」に関するデータでした。

 

テレビでも新聞でも「裁量労働制」が連日のように取り上げられてます。

裁量労働制が適用されている労働者の労働時間が、一般の労働者と比べて少ないというデータが、都合よく書き換えられていたそうです。

書き替えられたデータを安倍首相が国会で答弁に用いたところ、実際の労働時間とは大きく違っているということがバレてしまい、これに野党がかみつきました。

裁量労働者と一般労働者に対する質問の内容がおかしいと指摘される

指摘を受けて調べなおしたところ、データを取る際に答えを誘導するような質問をしていたことも判明しました。

裁量労働制で働く労働者に対しては「一日の平均労働時間」をもとにしてデータを取りましたが、一般の労働者に対しては「1か月間で一番長い労働時間」をもとにデータを取ったようです。

これが事実なら「意図的に裁量労働制をよく見せようとしてる」といわれても仕方ありません。

 

この事実が明らかになった結果、長妻氏はデータの撤回を求め、希望の党はデータの精査が分かるまで働き方改革の法案を提出しないよう求めました。

対して安倍首相は「このデータをもとにして法案を作ったわけでない」「法案の理由はちゃんとしている」と答弁されています。

そもそも労働制とはどんなものか

裁量労働制というのは、仕事の内容が専門性が高いため、仕事のやり方を労働者にゆだねる必要があるような場合に限って採用されるシステムです。

ああしろ、こうしろと指示されないかわりに、自分の判断で仕事を完成させる必要があり、裁量労働制が適用される労働者は自分で考えて行動しなければなりません。

 

裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の二つがあります。

どちらにも共通しているのは、業務を遂行するために使用者からの指示になじまないものです。

なので、業務の遂行の手段、時間配分が裁量労働者の裁量にゆだねられいるというわけです。

 

低い労働時間で済むと企業が制度を導入した結果、労働者が都合よく働かされる可能性もあります。

裁量労働制の一つ、専門業務型裁量労働制とは

専門業務型裁量労働制というのは、「業務の性質上その遂行方法を大幅に従事する労働者の裁量にゆだねる必要がある業務」に採用できます。

なので、専門業務型裁量労働制の対象となる労働者は、業務遂行手段と業務の時間配分の決定に使用者から具体的な指示をされません。

専門業務型の裁量労働制がとられているのに、使用者から具体的な指示があるなら、それは裁量労働制ではありません。

 

対象となる業務には、

  1. 新商品、新技術の研究開発業務
  2. 情報処理システムの分析又は設計業務
  3. 出版などの記事取材や編集の業務
  4. デザインの考案といった業務
  5. テレビや映画などのプロデューサー、ディレクター
  6. 弁護士、税理士、公認会計士、不動産鑑定士、弁理士、インテリアコーディネーター等の厚生労働大臣が指定する業務

といったものがあります。

 

専門業務型の適用に当たっては労使協定が必要

専門業務型裁量労働制を導入するには、労使協定の届出が必要です。

労使協定というのは、労働者と使用者との間で締結される協定をいいます。

 

使用者が労使協定に所定の事項を定めて届け出て、対象労働者を専門業務型裁量労働制の対象業務に就かせた場合は、労使協定で定める時間が労働したものとみなされます

労使協定で定める労働時間数は、1日当たりの労働時間をいいます。

労使協定で定た場合も法定休日に労働させれば割増賃金が発生します。

もう一つの裁量労働制、企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務で利用される労働制です。

なので、導入には対象となる業務が限られています。

企画業務型裁量労働制についても、業務の遂行について使用者が具体的に指示することになじまないことから、こちらも労働者の裁量で決めることになる業務が対象です。

企画業務型裁量労働制は労使協定の届出では認められない

企画業務型の裁量労働制の場合は、専門業務型裁量労働制と違い、労使協定の届出によって採用できません。

企画業務型裁量労働制を採用するには、労使委員会を設置して5分の4以上の多数によって決議し、決議を届けることによって適用されます。

労使委員会は、委員の半数は、管理監督者以外の者から、労働組合や労働者の過半数代表者に人気を定めて指名された人がなれます。

 

裁量労働制の対象となれる労働者は実は少ない

裁量労働制の対象となる業務は限られているので、実際に対象となる人は2%とか3%といわれています。

[裁量労働者には要件があるので、実際に対象となる労働者は少数です。

 

データの改ざんがあってあまりいいイメージを抱きにくい裁量労働制ですが、裁量労働制自体はおかしな法律ではなく、裁量労働制だから何時間も働かせていいといった発想の事業主のほうがおかしいだけです。

使用者に都合よく制度が利用されていることは思っている以上に多いのかもしれません。

裁量労働制をめぐる裁判

裁量労働制をめぐる裁判は少なくありません。

最近だと乙山彩色工房事件があります。

また、裁量労働制が使用者に都合よく利用されていて、要件を欠いているものも珍しくありません。

裁量労働制を都合よく利用して、1か月の労働時間が長時間にわたってしまっていることも多いです。

 

悪用されてることが目立ちます。

知らないことからくるトラブルも多いようです。

裁量労働制の代表的な判例

過去の裁判例を判例といいます。

判例が一つの判断基準となることがあります。

 

裁量労働制に関する代表的な判例をここに挙げておきます。

東京地裁 平成12/2/8 シーエーアイ事件

京都地裁 平成18/5/29 ドワンゴ事件

大阪地裁 平成27/2/20 ヒューチャーインフィニティ事件

大阪高裁 平成27/7/27 エーディーディー事件

京都地裁 平成29/4/27 乙山彩色工房事件

 

判例はネットで見れるものもあるので参考にしてみてください。