本の紹介「そして誰もいなくなった」「不如帰」「劉裕」「蘭陵王」

最近読んだ本の中から、面白かったものを紹介します。

今回紹介する本は、以前本屋で購入して読まずに積み重なっていた本の中から正月休みを利用して読んだものなので、新しいものはありません。

古い本ばかりですが今読んでも面白いと思う本もありました。

帯で紹介されているネタには触れてます。

アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」

「そして誰もいなくなった」は、アガサ・クリスティーの代表的な作品ですので、ご存知の方も多いと思います。

管理人は推理小説はそれほど読みませんが、本屋さんで面白そうに紹介されていたので購入しました。

 

お互い見ず知らずの10人の男女が、オーエンという一人の男から招待を受けてインディアン島に向かうシーンからストーリーが始まります。

一行は他に誰もいない島の大邸宅に着くのですが、オーエンという招待主は一向に現れません。

一行が不審に思いながらも食卓につくと、壁から聞こえてきたのは「10人のインディアン」という童謡と、10人の過去の犯罪についての告発でした……。

 

推理小説というと、密室トリックとか完全犯罪を主人公が一つ一つ推理して解決していくイメージでしたが、それとはちょっと違いました。

でも、小難しいトリックがないので、どんどん読み進めることができました。

年末に読んだのですが、続きが気になったおかげで大掃除が滞るし、徹夜で読んだら次の日は昼過ぎまで寝てしまいました。

10人のインディアン

10人のインディアンの男の子 食事に出かけた
一人が咽喉を詰まらせて 9人が残った

9人のインディアンの男の子 夜更かしをした
一人が朝寝坊をして 8人が残った

8人のインディアンの男の子 デヴォンに旅した
一人がそこにとどまり 7人が残った

7人のインディアンの男の子 薪を割った
一人が真っ二つになって 6人が残った

6人のインディアンの男の子 蜂の巣で遊んだ
一人が蜂に刺されて 5人が残った

5人のインディアンの男の子 訴訟を起こした
一人が裁判所にいって 4人が残った

4人のインディアンの男の子 海に出かけた
一人がニシンに飲まれ 3人が残った

3人のインディアンの男の子 動物園にいった
一人が熊に抱きつかれ 2人が残った

2人のインディアンの男の子 日光浴をした
一人が熱で焦げて 一人が残った

一人のインディアンの男の子 一人ぽっちになった
そして自分で首をくくって 誰もいなくなった

 

難しい推理をしながら読み進めていくわけではないので、推理小説初心者の管理人でも無理なく読めました。

この本を読んだ後に「オリエント急行殺人事件」と「スタイルズ荘の怪事件」を即購入しました。

徳富蘆花の「不如帰」

「不如帰」は、大山巌元帥の娘信子の哀話をもとにしたという徳冨蘆花の作品です。

軍人の武男と結核に侵される浪子のお話で、日清戦争の時代の逗子が舞台になっています。

 

 

多くの演劇・映画の原作となったこの小説は、少々読みにくいです。

「医師が見舞うたびに、あえて口にはいわねど、その症候の次第に著しくなり来るを認めつつ、術を尽くして防ぎ止めんとせしかいもなく、目には見えねど浪子の病は日に募りて、三月の初旬には、疑うべくもあらぬ肺結核の初期に入りぬ。」

明治に作られた作品なので、文体がこのように古くさいです。

読みにくさについては、高校時代に読んだ森鴎外の舞姫を思い出します。

 

この本を読むきっかけとなったのは、逗子に住んでいた時に浪子不動に立ち寄ったのですが、そこに設置してあった案内板がきっかけです。

 

逗子にある浪子不動は、不如帰が名前の由来といわれていおり、前々から興味があった作品です。

購入しても読まなかったのは、文体に抵抗があったからです。

 

浪子不動にある徳冨蘆花の碑。奥の階段から登って行くと披露山公園に着きます。

 

高台にある「高養寺」からは、不如帰の石碑が見えます。

干潮などの潮が引いているときは、石碑まで歩いて行けることもあります。

吉川忠夫の「劉裕 ー江南の英雄宋の武帝ー」

「劉裕」の作者は、大学の教授をしている吉川忠夫先生です。

中世の中国が専門のようで、他に何冊も本を出しています。

 

小説の主人公は、六朝時代に宋を起こした劉裕(武帝)です。

宋と言っても、趙匡胤が建てた宋よりも500年以上前のものです。

日本ではほとんど知られていませんが、中国では人気がある人物の一人です。

中国の王朝は、異民族によって建てられたものが多く、劉裕が建てた宋は中国人の多数を占める漢民族が建てた王朝だからです。

「混乱うちつづく六朝時代、王朝は乱立し、またそれぞれの王朝内では権力争奪の戦いによる殺戮が繰り返され、さらに異民族の絶え間ない侵略にさらされていた。宋の劉裕は、武力によって一介の武将から皇帝の地位をうばいとった。その激闘の日々と人間を、流動する時代とともにあざやかに描く。

作品の紹介から」

 

大学教授の作品なのでノンフィクションかもしれませんが、へたな歴史小説よりも面白いです。

また、この時代を舞台にした作品が少ないので、新鮮な気持ちで読み進められます。

 

残忍で快楽殺人者といわれる赫連勃勃(かくれんぼつぼつ)も作中に少しだけ登場します。

田中芳樹の「蘭陵王」

蘭陵王というのは北斉の皇族・高長恭のことです。

蘭陵王は、あまりの美しさのために、敵も味方も見惚れるほどだったといわれています。そのため、蘭陵王が戦場に出陣する際は仮面をつけていたそうです。

日本でも蘭陵王は知られていて、舞楽・陵王は後醍醐天皇に仕えて南北朝で活躍した北畠顕家が舞ったことで有名です。

六世紀の中国、南北朝時代と呼ばれる動乱の世。北斉は無能な皇帝の乱脈を極めた統治のもと、西に北周、南に陳、北に突厥と三方を強敵に囲まれていた。あまりの美貌ゆえに仮面をつけて戦場にたったと言われる北斉の皇族、蘭陵王・高長恭は智勇兼備、不敗の名将であり傾きかけた国を必死でささえていた。

本の内容紹介から

蘭陵王が、主君の後主に疑われ、毒薬を賜って死亡すると、北斉は急速に国力が低下してしまいます。

結局、蘭陵王が死亡してから4年後、北斉は北周によって滅ぼされてしまい、後主も後に殺されました。

蘭陵王を主人公にした動画

実は、蘭陵王を主人公にした動画もあります。

蘭陵王を主人公にした恋愛ストーリーみたいな内容ですが、観始めるとなかなか面白くて一気に最後まで観てしまいました。

作品の中には、斛律光、尉遅迥、宇文邕といった有名な武将も出てきて、ただの恋愛ドラマとは少し違います。

楊堅も驚きの場面で登場しています。

青木理の「絞首刑」

この本で紹介されているのは実際にあった殺人事件なので、面白いというのははばかられますが、あっという間に読んでしまいました。

 

この本ではいくつかの殺人事件を取り上げていますが、取り上げているのは犯人が死刑判決となった事件だけです。

先進国では、日本のみが死刑制度を支持(アメリカは州による)していますが、死刑制度についてほとんど国民は理解しておらず、死刑囚がどんな人かも事件を通じてしか知らされません。

 

この本では、木曽川・長良川連続リンチ殺人事件(大阪・愛知・岐阜連続リンチ殺人事件、3府県連続リンチ殺人事件)も取り上げていて、実際に著者が死刑囚と面会してどんな人物かを取り上げています。

他の事件には、栃木今市四人殺害事件、半田保険金殺人事件、熊谷四人拉致殺傷事件、飯塚事件が取り上げられています。

 

えん罪の可能性がるのに処刑されてしまった元死刑囚も取り上げています。

殺人事件もそうですが、どちらかというと死刑制度について問う内容の本でした。

著者は死刑制度に反対のようなので、偏った意見も散見されますが、死刑について考えさせられました。