映画「駆け込み女と駆け出し男」を観たのがきっかけで原作にも興味が湧いたので読みました。

「駆け込み女と駆け出し男」の原作とされているのは、井上ひさしさんの「東慶寺花だより」という小説です。

 

井上ひさしさんは、ひょっこりひょうたん島でも知られています。

管理人は、ひょうたん島は観たことありませんが、ひょっこり島のテーマソングは子供の頃に白黒動画で何度か見たことがあります。やっぱ白黒のオリジナルじゃないとだめですね。

「東慶寺花だより」をおすすめしたい人はこんな人です。

・東慶寺に行ったことがある、または行く予定がある人

・鎌倉に住んでる人

・趣味が小説の人(この作品は歴史が苦手でも読めます)

東慶寺は、江戸幕府公認の縁切寺

東慶寺は、花の寺としても知られる鎌倉にある臨済宗円覚寺派の寺院です。

鎌倉で二か所しかないミシュランガイド三ツ星にも選ばれてるので、外国からの観光客も多く、常に賑わっています。

 

東慶寺は、北鎌倉駅の円覚寺を創建した北条時宗の奥さんが開山といわれており、場所も円覚寺から徒歩3分と近いです。

東慶寺の住職は男性ですが、江戸時代までは尼寺だったといわれてます。

後醍醐天皇の皇女や豊臣秀吉の孫が住持を務めるなど、古くから格式の高い寺院で、鎌倉尼五山でも第二位の格式だったといわれています。

 

東慶寺は格式高い尼寺として知られていますが、全国的に有名なのは江戸幕府公認の縁切寺としての側面です。

江戸時代、夫と離縁するために妻が寺院に駆け込んだ場合は、調停人が夫と妻との間を調停することになります。

この調停がうまくいかない場合は、妻が24か月の間寺院で過ごすことによって離婚が成立したといわれています。

江戸幕府公認の縁切寺は、全国でも上野(群馬)の満徳寺と東慶寺だけですが、満徳寺は既に廃寺となっているので東慶寺は貴重な存在です。

とはいっても離婚が実際に問題となるのは、武士や大店といった財産ある人達で、庶民はお金が絡むことも少なく、妻からも自由に離婚できたというのがほんとのところみたいです。

「東慶寺花」だよりは「駆け込み女と駆け出し男」の原作

2015年に公開された映画「駆け込み女と駆け出し男」は、個人的にかなり面白かった映画です。

神奈川県の人でも東慶寺を知らない人は多いです。

少なくても管理人の周りには、建長寺や円覚寺を知ってる人はいても、東慶寺を知っている人はいません。

鎌倉以外で東慶寺を知っている人は、鎌倉に詳しい人や、歴史が好きな人くらいです。

管理人も高校卒業後に鎌倉に引っ越したときに東慶寺を知りました。

映画と小説を読む前に、東慶寺が縁切寺で、尼寺ということを知っていると一層楽しめると思います。

 

管理人は、作品を見る前から東慶寺が縁切寺ということを知ってましたが、実はいまいちイメージがつきにくく、何となくイメージしてたくらいでした。

映画のおかげで縁切寺というもののイメージができました。

 

江戸時代、幕府公認の縁切寺として名高い尼寺の東慶寺には、複雑な事情を抱えた女たちが離縁を求め駆け込んできた。女たちの聞き取り調査を行う御用宿・柏屋に居候する戯作者志望の医者見習い・信次郎(大泉洋)は、さまざまなトラブルに巻き込まれながらも男女のもめ事を解決に向けて導き、訳あり女たちの人生の再出発を後押ししていくが……。

小説「東慶寺花だより」と映画は別物と思ったほうがいい

小説「東慶寺花だより」を読み進めていくと、映画と随分と違う印象を受けました。

主人公の信次郎は、戯作者も医者もどちらも駆け出し中なので駆け出し男というわけです。

小説を読んで初めてタイトルの意味が分かりました。

 

ちなみに映画に出てたじょごは、小説には出てきません。

小説だと、御用宿が3軒でてきますが、信次郎がお世話になっていたのがそのうちの柏屋という御用宿です。

小説では、じょごはいませんが、御用宿の主人、番頭さん、女将さん、女の子が登場します。

本当に原作かなと思ったほどなので、映画と小説は別物と思って読み進めたほうがいいです。

小説の方は、短編小説っぽくそれぞれの章で完結していて、御用宿のメンバーが駆け込み理由を推理するといったこともしています。

鎌倉市民や逗子市民にはお馴染みの、鎌倉各所の地名や寺院、小坪、金沢八景といった名前も出てきますので、地元の人はより楽しめると思います。

 

寺の境内に身に付けているものを投げ込めば、駆け込みは成立する――離婚を望み、寺に駆け込む女たち。夫婦のもめ事を解きほぐすと現れるのは、経済事情、まさかの思惑、そして人情の切なさ、温かさ。鎌倉の四季を背景にふっくらと描かれる、笑いと涙の傑作時代連作集。著者自身による特別講義を巻末収録。

小説カバーの紹介より

東慶寺花便り

小説を読んだ後に東慶寺を見学しましたが、駆け込んだ女性が何人も過ごしてたとは思えないほどこじんまりとした寺院でした。

映画も小説もどちらも面白かった

管理人は、最初に映画を観てから小説を読みました。

映画化されている小説は多いのですが、たいていは一方が面白いともう一方はつまらないと相場は決まってます。

しかし、映画「駆け出し女と駆け出し男」と小説「東慶寺花だより」は、どちらも面白かったです。

どちらかというと小説の方が、鎌倉や歴史に馴染みがなかったり、普段小説をあまり読まないと途中で飽きますが、この小説の場合は短編なので飽きずに読めました。

 

章ごとに話が分かれてるので、旅行などにもおすすめです。

おすすめ度80/100

江戸の離婚は現代の二倍? 寺の境内に身につけているものを投げ込めば、駆け込みは成立する――。
離婚をのぞみ、寺に駆け込む女たち。夫婦のもめ事を解きほぐすと現れるのは、経済事情、まさかの思惑、そして人情の切なさ、温かさ。鎌倉の四季を背景にふっくらと描かれる、笑いと涙の傑作時代連作集。十年の歳月をかけて書きつむいだ感動の遺作。著者自身による特別講義を巻末に収録する。
原田眞人監督、大泉洋、満島ひかり出演で映画化。解説・長部日出雄

〈東慶寺にはどんな女性が、何人駆け込んだか。正確にはわかりませんが、江戸後期までに少なくとも3千人と言われています>

(井上ひさし「東慶寺とは何だったのか」より)